テンペスト

テンペスト 第四巻 冬虹 (角川文庫)

テンペスト 第四巻 冬虹 (角川文庫)

琉球王朝末期の沖縄を、臨場感たっぷりに描き出した池上永一の『テンペスト』。

ハードカバーで出たときは、そのあまりの分厚さに手を出しそびれていたのですが、この8月から4ヶ月連続で毎月25日に発刊されることになり、それならばと毎月楽しみに買ってきました。


2巻目の途中あたりから、なんだか無理がある展開になっていき、筆者の文体に対する違和感とも相俟って、やや食傷気味ではあったのですが、それでも先が気になって仕方ない!

この物語の強さに飲まれて、3巻、そしてつい最近でた4巻も買い、先日読み終えました。


違和感は最後までぬぐいきれませんでしたが、終わり方は納得のいくものでした。
この物語、結末を先に決めてから書き始めたんだろうな。


ストーリーの詳細については省略しますが、当時の琉球王国が、中国と日本の間にはさまれていたことの意味、そして、今は日本という国家のなかに含まれている沖縄が、もともとは琉球王国という独立した「国家」であったということの意味を、フィクションであるとはいえ、いやフィクションであるからこそ強く考えさせられる作品でした。




この作品の4巻の最後のほうにあったシーンのこと。

時代は明治に移り、明治政府は琉球王国に、まずは琉球藩とし、さらに「沖縄県」にしようと迫る。

主人公であり、自らの性を「宦官」であると偽って琉球のために闘った文官、孫寧温(女性名は「真鶴」)と、互いに思いを寄せあう元薩摩の侍であり、現在は明治政府の役人として、まさに「琉球処分」を実行するべく琉球にやってきた朝倉とが、二人の思い出の地で言葉を掛け合う。


真鶴「私はこの国を愛しております。世界に誇る美しい国だと今でも信じております……。大国に負けない国にしたかった……。世界から尊敬される国にしたかった……。私の琉球が殺されてしまうのに、あなたを責めることはできません……」


朝倉「真鶴さん、日本がその責任を担います。世界から尊敬される国になります。きっと琉球と同じくらい美しい国になります。思いやりと慈しみと美と教養を日本に分けてください」


真鶴「新生日本に気品と風格を望みます。どうか琉球を愛し続けてください。それが民の願いです」


朝倉「しかと受け止めます。日本に併合されたことを五十年後、百年後の民が心から喜べるように琉球を愛すると約束します」






先ほど、沖縄知事選の速報で、仲井間氏の当確が出た。


沖縄では「誰が知事になっても基地はなくならないさ」という意見が大勢を占めているとの報道もある。


沖縄出身の池上氏が、真鶴と朝倉を通して伝えたかったメッセージは、果たして届くことはあるのだろうか。


沖縄に、そしてヤマトに。