モーケン
一昨日の夜、たまたまつけていたNHK総合でやっていたNHKスペシャル「謎の海洋民族モーケン」の再放送。
すっかり魅了されました。
ミャンマー南部沖、インド洋・メルギー諸島海域を漂泊する海洋民族モーケンは、海洋民族のなかで唯一、現在も海上生活を続ける少数民族(現在およそ1000人ほどになってしまっているようです)。
その潜水能力と動体視力がものすごい。
フィンもつけず、素足でぐんぐん20mの深さにまで潜り、海底で貝やエビを探し、つかまえて浮上する。
海中に泳ぐ、群れから少しはずれた魚にねらいを定め、ターンする瞬間を狙って銛で一突き。
夜は、夜光虫の放つ光と小さなヘッドライトの灯りを頼りに深く潜り、中国向けに高く売れるナマコをとってくる。ナマコは夜行性なのだ。
海底の起伏、サンゴの位置がすべて頭にはいっているから、こんなことができるのだ。
なんだか、進化論の人類版をみているようでした。「海に潜る」「銛で漁をする」という能力に特化した、人類の新たな種(しゅ)。
そのモーケンの人たちを、ミャンマー政府は陸に定住させようとしている。
はじめは、政府がただ単にかれらを把握しておきたいからだろうかと思っていたら、どうやらそれだけではないらしい。
ミャンマー政府は、中国の需要増加を見込んで、漁獲高の増加を国策として促進している。
その結果、モーケンの人たちの漁場にも、大型の商業漁船がはいりこみ、エビやナマコなど、モーケンの唯一の換金手段を根こそぎもっていってしまう。
陸への定住を勧めているのは、そのようなモーケンの人たちからの異議申し立てを避ける意味合いもあるのではないだろうか。
こんなところにも、グローバリゼーションの波は襲ってきているのだ。
海で生活を続けることのリスクは多々ある。実際、番組のなかでも、生後二ヶ月の男の子が病気で亡くなっていた。
それでも、モーケンの人たちが海で生活しつづけたいと希望している限り、その生活を奪ってはならないと思う。
それにしても「謎の海洋民族」はないぜ、日本放送協会。