きょうの料理50年

午前中NHKで放送されていた「きょうの料理50年 時代を映す懐かしの100レシピ」が、とてもおもしろかった。

副題が示しているように、家庭の料理というのは、ほんとにその時代を反映しているのですね。

番組が始まったのが1957年なので、昭和でいうと32年。その放映当初は、外交官婦人が講師になって西洋料理(ポークカツレツ→とんかつ、クリームコロッケ、スパゲッティミートソースなど)を教えたり、中国からの留学生が中華料理を伝えたりと、番組が食卓に他国の文化を紹介する窓口のような役割を果たしていました。こうして日本は、ゆっくりと、しかし確実に、戦後日本という新しい社会を受け入れ、作り上げていったのでしょう。

昭和40年代にはいると、「家庭にレストランの味を」ということで、プロの料理人が講師になって、いろんな料理を教えるようになります。またオリンピックを機に、「世界の家庭料理」と題した特集がくまれ、料理を通した国際化、みたいな状況をつくりだしてました。

44年には初めて冷凍食品を素材とした料理が紹介され、また料理の分量が5人前から4人前にかわり、おせち料理のレシピもとりあげられるなど、高度経済成長期に一気にすすんだ核家族化の影響も垣間見られます。

さらにオイルショックの頃には「経済的な料理」特集、女性の社会進出を受けて「いそがしい人のために」特集と、時代背景がほんとうに透けて見えます。後者において、「あくまでも料理をつくるのは女性」という視点が見え隠れしているのもまた、時代背景ですね(実質的にはいまもあんまりかわんないかも)。

50年代に入ると、「一億総中流」の意識のもと、精神的、経済的な余裕を一般庶民が持ち始めたことを受けて、紹介されるレシピが徐々に本格化。カレーも魚介類が具に入ってきたり、ラザーニャなんてこじゃれた料理も。

58年には「男の料理」シリーズがはじまり、男性の芸能人や識者による料理の披露がなされるようになります。エジプト考古学者の吉村作治さんはもしかするとこれで有名になったのかも。これは、「男子厨房に入らず」が過去のものになったことを示している、と番組では紹介されていましたが、むしろ料理が趣味化していったことの表れのような気もします。男の料理は、あくまでも趣味であり、日々の生活のための料理ではないってことです。

その後は、牛肉輸入自由化によって安くなった牛肉をつかったレシピが増えたり、平成5年の米不足のときにタイ米が輸入されてきた頃は、タイ米をつかったレシピが紹介されたり、またダイエット料理、アトピー用のレシピなども取り上げられるなど、どんどん多様化していきます。ちなみに100のレシピの最後は、辰巳芳子さんの「命のスープ」でした。

なお、今後はまたいろいろとかわっていくようで、「地元の味」特集がはじまったり、新番組として「きょうの料理 ビギナーズ」もはじまるようです。

考えてみれば、家庭での料理は、毎日のことだけに時代を反映しているのは当然のこと。50年を通史的にみると、はじめは番組主導で「日本の家庭料理」を作り上げていき、時代とともに番組が時代に合わせるようになっていったというふうにいえるでしょうか。

バイト先でみたので録画ができなかったのが残念。最初の方も見逃していたし、ぜひとも再放送キボンヌ。