紳士服店考

最近ニュースで合併問題がらみでよく出てくる紳士服店、フタタ。九州以外の方たちには聞き覚えのない店名だと思います。

自分は九州出身なので、フタタって紳士服店だよね、くらいのイメージはありますが、でもじゃあどこにフタタの店があったかといわれると、どうにも思い出せません。その程度の規模だったので、買収合併のターゲットになったのはよくわかります。

結局はコナカといっしょにやることになったようですが、団塊の世代が一気に退職し、スーツの需要がますます減っていくなか、生き残りは大変でしょうね。「団塊世代の男性が着る洋服はうちにくれば全部そろう」というイメージをつくりあげていかないと厳しいでしょう。

ところで自分の祖父は、フルオーダーの仕立屋をやっていました。その店は長男が継ぎ、さらにその息子が継いでいます。こちらのほうはもっと厳しいようで、もっぱらセミオーダーでなんとかやっているという状況のようです。

仕立屋さんとかテーラーなんて、もうほとんど残ってないですよね。“吊るし”を売っている量販店には価格面で対抗できないし、高い金はらうんなら輸入ブランド物を買ったほうがイバりがきく、という状況下では、生き残りは厳しいのでしょう。

“腕のいい仕立屋さん”という存在は、もう過去のものになりつつあるようです。そのうち、「腕のよさ」という概念すら、なくなってしまうかもしれません。

スローフードLOHASなどが生き残っているのは、その質のよさというよりは、資本主義的な消費ラインにうまくのっかることができたからだと思います。仕立屋さんも、そういう消費ラインにのっかることでしか生き残れないのでしょうか?

仕立屋という存在が時代にそぐわない、ただそれだけなのかもしれませんが、なんとも寂しい。

社会学者としては「寂しい」なんていう情緒的な結論にもっていくべきではないのですが・・・