ブレイブ・ストーリー

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

宮部みゆきという作家は、少年と異世界についてかかせるとほんとにうまい。「龍は眠る」は、その最右翼だと思っている。この本では、超能力をもった2人の少年と、彼らを取り巻く大人達の様子が、整合性をもって描き出されている。


「ブレイブ・ストーリー」もまた、その流れにのった作品。文庫本にして上中下の3巻、計1300ページを超えるこの大作は、しかしその長さを感じさせないだけの内容をもった佳作である。心理描写の冗長さは否めないのだけれど、それがまた宮部みゆきの魅力でもあるので、個人的にはあまり気にならない。


細かいストーリーについては省くが、この本の特徴をひとことでいえば、まっすぐド真ん中で少年の成長物語。少年が冒険を続けていく中で、いろんな人たちと出逢い、問題を解決しながら、精神的な成長を遂げていく。そして少年は、大切なのは自分で自分を受け入れることであり、その上で自ら人生を切り開いていかなければならないのだということに気がつく。


この本で問われている「ブレイブ=勇気」は、“自分で自分を受け入れる”というところにある。なぜなら、自分を受け入れるということは、憎しみ、身勝手さ、妥協など、自分の負の部分も含めて受け入れるということだからだ。これは勇気のいることである。これができないからこそ、人は悩み、運命を呪い、人生を嘆き、そして神に祈るのだと思う。


でも、それでは何も解決しない。大切なのは自分が変わること。そしてそのためには、自分を受け入れることなのだ。主人公のワタル少年は、異世界での旅をとおして、そのことを学ぶのである。


もう、ほんとにド真ん中で成長物語なので、特に目新しいことなどはない、悪く言えばどこにでもあるストーリー。でもそれだけにストレートにメッセージが伝わってくる。マンガや映画など、他の媒体で二次作品がどんどんつくられているのも、このストレートさに由来しているのだろう。おそらく、今後はRPGゲームにもなるんじゃないだろうか?


おそらく10代の少年向けに書かれたであろうこの作品、大人が読んでもおもしろいし、気づかされることも多い。読後感もスッキリ。落ち込んでるときなど、オススメです。


・・・映画もみたくなってきた。