トランスクリプト

僕は、聞き取り調査をするときにはなるべく録音をするようにしている。論文などで引用している話し手の言葉が創作(というより捏造)ではないことを示す物的証拠として残しておきたいというのが第一の理由だが、あとで聞き直したときに、インタビューをしているときには気がつかなかったことに気がついたりすることもあったりするので、そういう意味でも録音をしておくのである。


もちろんその弊害もある。最大のものは、話し手が録音を意識してしまい、本音で語ってくれなくなってしまうこと。語り手によっては、はじめっから録音のことなど気にせずにしゃべってくれる人もいるし、しゃべっているうちに録音のことを忘れてしまう人もいる。逆に、はじめから録音を拒否したり、録音をとめたとたんにべらべらと本音を語り出す人もいる。だから、録音するかどうかは相手をみながら判断することになる。


そしてもうひとつの弊害が、トランスクリプトの問題だ。transcript、というとちょっと格好いいが、ようするにテープおこしのことだ。これは、弊害というより、単に時間がかかるのである。


もうさすがに慣れてきたが、しかしそれでも録音時間の3倍はかかる。今回の調査では延べ4時間は録音しているので、最低でも12時間はトランスクリプトにかかってしまう。もちろんそんなにぶっ通しでは集中力がもたないので(1時間やるとかなりへばる)、実際にはもっと時間がかかっている。


さらに、「沈黙の時間」まで書き込む人もいる。例えば(三秒沈黙)とか。そこまでやったらもっと時間がかかる。僕も、秒数までは計らないが、「、、、」や「。。」とすることで、沈黙があったことは示すようにしている。その沈黙が重要であるときもあるからだ。


ということで、ここ数日、辺野古調査の録音を集中的にトランスクリプトをしている。録音したときより少し時間がたっているので、忘れていることも多いし、その分、どうしてもききとれないところも出てきてしまう。今回は扇風機を回しているところでの録音も多かったので、雑音がどうしてもはいってしまい、さらに効率が悪い。


でも一方で、そのときには気がつかなかったことに気づくこともまた多い。あと、トランスクリプト中に語り手の発言を聞きながら、「こういうこと聞きたいな」と思っていると、インタビュアーである自分が「では、○○についてはどうですか?」などと絶妙の問いかけをしていたりすることもあり、「ナイス、俺」と思ったりもする。


そういうこともあるので、トランスクリプトというのは、つらい作業ではあるけれど、けっこう楽しい作業でもある。


なお、録音機材としてはボイスレコーダーを愛用している。かつてはMDに録音していたが、録音時間が長くなるとディスクを取り替える必要があったり、録音ディスクがかさばったり、管理が面倒だったりと、いろいろ面倒だった。


その点ボイスレコーダーだと、録音時間は比較的長くとれるし、小さいので目立たないし(ということは語り手への圧迫感が小さい)、なによりデータなので管理が楽。あと、トランスクリプトのときに、音質をあまり劣化させることなく速度調整が可能であるというのも便利。僕はだいたい、75%のスピードで再生しながらやっている。それでも指は追いつかないけど。


以上、トランスクリプト作業を続けていく気力を高めるための「がんばれ、自分」日記、終わり! さて再開再開(`・ω・´)