なあ公文書館にいこうじゃないか

しばらく前の話になりますが、先日、板橋区公文書館というところにいってきました。中学高校時代の先輩がこの四月から専門員として勤めはじめたのですが、いろいろと地域の資料がそろっているようだったので、ちょっといってみたのです。


公文書館というと、沖縄研究に携わっている方は米占領下の民政府関係の資料を多く保存している「沖縄県公文書館」に思い当たることも多いと思いますが、一般にはあまり知られていない施設。ですので、wikipediaから定義を引用しておきます。

公文書館(こうぶんしょかん、Archives)は、歴史的な史料としての公文書(条約、宣言、外交文書、政府関係者の報告書や伝達メモなど)を保管し、公開する機関、施設である。刊行された図書を収集する図書館、非文書資料を収集する博物館とは区別される。図書館における司書(ライブラリアン)、博物館における学芸員(キューレーター)と同様に公文書館には資料の収集、整理、研究の専門職としてアーキビストが置かれるが、日本では司書や学芸員と異なり、資格の法制化は成されておらず、世間的な認知も低い。


公文書館をもっていない自治体も多く、市町村レベルで公文書館をもっているところとなると、さらに少なくなります。実際、東京23区で公文書館を設置しているのは板橋区だけなのだとか。


しかしこの公文書館、フィールドワーカーにとってはたいへんに便利な施設なのです。


上記wikipediaの定義では条約とか外交文書などという仰々しいコトバが並べられていますが、地方自治体のレベルでそんな文書があるわけないです。


んじゃあどんな文書がおかれているのかというと、歴史的な古文書もあるのですが、もっとも多いのは自治体の行政関係の文書です。自治体には発行した文書を保管しておく義務がありますが、有期限なので、期限をすぎた場合は廃棄処分になってしまいます。ですが、公文書館をおいている自治体の場合、廃棄されることなく、公文書館ですべて保管されることになるのです。また、通常の業務で発行した文書だけでなく、報告書や統計資料の類もすべて保管されています。


役所に資料をもらいにいくと、いろんな課をたらいまわしにされた上で、担当者が休みなので明日きてください、ってことも結構あるのですが、こうやって行政関係の資料をまとめて保管してくれているところがあると、たいていの資料はここでそろいます。ただし、新しい資料を手に入れるためには、やはり役所で手続きを経る必要があるのですが。


こうした便利さに加えて、貴重な公文書が廃棄されることなく保管されつづけるということ自体、重要です。過去の事例を調べる際に、資料がないとほんと困りますからね。


今回は特になにかを調べにいこう、という目的があったわけではなかったので、主に板橋区の概要についてまとめてある資料をつらつらと見ていたのですが、おもしろかったのは高島平団地の話。


1972年に入居がはじまったこの団地には、当時若かった団塊の世代が多く集まり、いきなり2万人もの人口増加を短期間に経験します。そのためまずは幼稚園や小学校が不足し、続いて中学校が不足する・・・などといった事態に陥り、また一方では「自殺の名所」として有名になってしまい、ピーク時は年間50人もの人が飛び降り自殺をしたのだそうです。一週間に一人の割合です。午前中に一人、午後に一人なんていうこともあったそうで、そんな団地に住んでいた人たち、そこで育った人たちにどんな影響を及ぼしたのだろうかと、不謹慎ながら気になります。


そんな高島平も、現在では少子高齢化が進んでいるようで、団地に求められる機能もまたかわってきているはず。こうした高島平団地の歴史と変遷、いつか調べてみたいですね。きっといろんなものがでてくるはず。


ともあれ、いろいろと便利な施設です、公文書館。タダで利用できますし、一度行ってみるといろいろと発見があると思いますよ。