九州男児のジェントルマン
僕は週に二日、国際教養部という、留学生や帰国子女がたくさん所属している新設の学部でアルバイトをしている。仕事内容は教材の印刷や授業で使うPCやプロジェクターのセッティングなど。日によって違いはあるが、わりと楽な部類にはいる仕事だ。
今日は午後から出勤。さっそく4限の授業のためにPCとプロジェクターを抱えて教室にむかう。廊下は、前の講義がはやめにおわった教室から出てきた学生たちでごったがえしている。いつもの風景だ。
そんななか、ひときわ大きな女子生徒の声が飛び込んできた。
九州男児のジェントルマンって世界一かっこいいよね〜
キュウシュウダンジノジェントルマン
きゅうしゅうだんじのじぇんとるまん
九州男児のジェントルマン!
一人じゃなかったら、ぜったい大爆笑していたところなんですけど笑
「世界一」っていう形容のしかたも、「ちょー」に慣れきったいま、逆に新鮮。さすがは異文化コミュニケーションあふれる国際教養学部生である。
とりあえず九州男児のジェントルマンを想像してみた。男気があって、男からも女からも好かれる、腕っ節の強くて、歯並びもよくもちろん真っ白キラキラで、かつレディファーストが身に染みついているからすごく自然に女性をエスコートできちゃって、ワインのうんちく語ったりもして、デキャンタージュなんかもできちゃったりして、でもって日常の立ち振る舞いがスマートな男性。
・・・うん、たしかに世界一かっこいい。
次に、具体的な誰かを思い起こしてみる。
まず、島耕作ではない。悪い女の誘いを断るのに「君は魅力的だが君から漂うシャネルの5番が気に入らない」なんて言う九州男児はいない。ではサラリーマン金太郎かといえば、耕作よりは近いがやはりなんか違う。
実在の人物を思い浮かべる。福山雅治は九州男児(長崎出身)でスマートさわやかだが、これもまた違う。佐藤浩市は割と近いかも。でも東京出身だ。
で、いちばんしっくりきたのは、五木寛之の「青春の門」にでてくる塙竜五郎。スマートさには欠けるが、あの男気はマッチョであり且つジェントルマン。筑豊だからもちろん九州男児。たしかに男も女も惚れる。