制度とイメージと現実と

今回の選挙について、こんな興味深い数字がある。

比例の得票率と議席の占有率

政党名  比例での得票率   議席占有率
自民党  38.2%       61.7%
民主党  31.0%       23.5%
共産党   7.3%        1.9%
社民党   5.5%        1.5%

つまり、比例で獲得した票の割合と、実際に当選した候補者の数(比例+小選挙区)との間に、ものすごい差が生じているというわけだ。

これは比例で得られた議席も含めて占有率を計算しているので、これをのぞくとさらに大きな差が出る。

政党名  比例での得票率   選挙区での議席占有率
自民党  38.2%       73.0%
民主党  31.0%       17.3%
共産党   7.3%        0.0%
社民党   5.5%        0.0%

つまるところ、今回の自民の圧勝は、小選挙区における圧勝であり、比例だけをみれば、それほど自民と民主との差はなかったということ。単純な言い換えはするべきではないかもしれないが、政党支持率ではさほど差がなかったということもできるだろう。

この数字が示しているのは、小選挙区制度というのは、雰囲気やイメージが結果に与える力が相当に強く働くシステムなのだということ。

前の日記でも触れたけど、今回の選挙前の雰囲気はこういうものだったように思う。

自民党民主党、どっちを選ぶにも決め手がないのだけれど、なんだかんだいってこういう不安定なときには、自民党にいれておいたほうがよさそうだ。それに小泉さんは古いしがらみからはなれて改革してくれそうだし、まかせてみるか」

この雰囲気のおかげで、自民党の候補者の多くが各選挙区で最多得票を得た。そして小選挙区では、複数の候補者から1人だけしか選ばれないので、結果的に自民党小選挙区での圧勝につながったわけである。

もちろん、中選挙区制だったとしても、複数の自民党候補が上位を独占して、結果的に同じことになった可能性はある。ただ、中選挙区制だったとすれば、民主党はもっと立候補者を減らし、確実なところを狙っただろうし、そうすることによってもっと選挙区での議席を確保できたであろう。

いずれにせよ、獲得した議席数ほどには、自民党への支持が集まっているとはいえないようだ。しかし、現状をかえてほしいという雰囲気、小泉さんならかえてくれそうだというイメージが全般にみられたということは、まぎれもなく事実だろう。それが、議席数という形で反映されたということになる。

また、自民党の獲得議席数については、「少ない方がよかった」が56%で、首相が数を背景に、強引な手法をとる不安を「感じる」と答えた人は63%を占めたという世論調査の結果もある(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050913-00000115-yom-pol)。ここまでの圧勝にちょっとびっくりというのが大方の反応のようだ。

小選挙区制度は、イメージや雰囲気を実際の結果に結びつけるための、ひじょうに優れた道具のようだ。稀代のポピュリスト、小泉さんにとって、これほど便利な道具はないだろう。その結果が今回の自民党圧勝であり、その結果を生み出したのはひとりひとりの有権者

結果におどろいて思考停止するのではなく、その結果を引き受ける覚悟をもって、これからの政治を監視していかなければならないだろう。