まっとうな青春

ハチミツとクローバー 6 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 6 (クイーンズコミックス)

ひさびさに本の話題・・・といってもマンガだけど。
いや、いろいろ読んでるんですよ、ほんとは。「対岸の彼女」とか「私という運命について」とか、あるいは「センの正義論」なんていうおべんきょうの本も読んでおります。でも、まずはハチクロを読みたてなので。

舞台は美大。芸術を主題とする世界は、知っているようで知らない世界。結果に対して才能が占めている割合が大きいところが、成長物語としては残酷でもある。そんな世界を舞台に、まっとうな青春ストーリーが描かれている。

うん、まっとうな青春もの。いろいろと揶揄ったりおちょくったりしながらも、「青春」を真正面からとらえていて、それがストーリーとして成功している。

あふれんばかりの才能をもつ「はぐ」に恋をしながら、彼女の世界に届かない自分に空虚さを覚え、「自分探しの旅」に出て、というよりとにかく自分の居場所から逃げ出して、旅先でいろいろな経験をし、「手ぶら」でかえってきて、でも自分のこれまでかかえてきたものすべてが大事なのだという確証を得て、ごく自然に「はぐ」にスキだと伝える竹本くん。

僕は君にずっと感情移入していた。いまでもしていると思う。天才に対するコンプレックスをまっとうに乗り越えた君は、すごいやつだ。ああ、そういう努力をしてこなかったなと、逆にコンプレックスを覚えるくらいにすごい。

一方で僕は、一途に想い続ける女性がいながら、自分に一途な想いを寄せてくれる友達にも優しくふるまう真山を、ひどいやつだとおもっていた。

ここにきて僕は思い当たる。ああ、自分が似ているのは、竹本ではなく真山なのだ、と。

竹本に感情移入するのはとても楽。自分と同じ悩みを抱えていて、しかもそれを克服しなければならないことに気づいていて、そこに対して真正面からたちむかってくれているから。

だけど真山は、感情移入するにはちょっとつらい。自分がもっているものと同じ嫌な部分を、真山自身も無意識のままに垂れ流していて、それがほんとに自分の似姿のようで、みていていらいらしてくる。

それはさておき、とにかくおもしろいマンガ。芸の細かいオタク的な小ネタ満載だし、ふつうに笑えるシーンも多い。まだ未完。続きが気になる〜