過去の世代との対話

先日、親戚が集まる機会があった。そこで二人の叔父から興味深い話をきいた。

まずは50代の叔父の話。


会計事務所を営んでいる叔父は、会社経営に関する講演活動で全国を飛び回る売れっ子。講演がおわると、だいたいレセプションが開かれて名刺交換などをしたりすることになる。


そこでよく、会計事務所などで働きながら公認会計士や税理士を目指している若い職員から「資格をとったら将来は独立したいんだ」という話を聞くのだそうだ。僕なんかは「それはそうだろうな」と思うのだけれど、叔父の意見は少し違う。独立をする前に、資格をとらせてもらったぶん、事務所に恩返しをしようとは思わないのかと。


僕はそういう資格をもっているわけでもないし、とろうとしたこともないが、「資格をとった以上、いつかは独立開業」というのは、僕の世代では普通にうけいれられる「目標」だと思う。流行りといってもいいかもしれない。むしろ、「資格をとらせてもらったから、ちゃんと恩返しをしなくては」というのは、時代錯誤な感じがする。


実際のところ、会計事務所は、東京などの都心であればともかく、地方においては少ないパイを奪い合っているのが実情なわけで(企業が利益をあげてくれなければ基本的に会計事務所は儲からない)、むやみに独立開業してしまっては、業界全体がジリ貧に陥ってしまうように素人目には思える。それに、独立開業に向いていない人だっているだろうし、大きな会計事務所で働いたほうが適しているという人もいるだろう。


なのに、なんとなく「独立開業が最終目標」という考え方が、「独立しないとかっこ悪い」とか「独立したひとはえらい」という、感覚的な雰囲気とともに、うすーくひろーく広がっているように感じる。


こうした風潮を感じ取った上で、「独立開業」が、各人の主体的な選択というよりも、雰囲気に流された結果として口に出されているように感じたからこそ、叔父も敢えて「恩返し」などという古風な言葉を用いて挑戦的な言葉を投げかけたのだろう。かく言う叔父も、自ら会計事務所を立ち上げた「独立派」なのだから、若い人たちの独立意識については理解しているように思える。だからこそ叔父は、若い人たちが「独立開業」を語るときの「軽さ」に危惧を覚えているのではないだろうか。その証拠に彼は、若い人たちには「ビジョンがない」という。5年後の自分、10年後の自分が想像できていないのに、むやみに独立開業を語る、そのうわついた感じが気になったのではないか。


もっと客観的かつ俯瞰的な位置から、自身の行く末を見据えた上で、人生の選択をすることの必要性・・・叔父がいいたかったのは、こういうことではないだろうか。自戒を込めて、こう代弁しておこう。


長くなったので、もう1人の叔父の話はまた後日。