環境・ビジネス・コミュニティ

現在、週イチで環境社会学の授業をもっている。環境社会学といっても、なかみは環境問題についての授業という側面がどうしても強くなってしまい、社会学的な側面があまり出せていないような気がする。とにかく、環境問題をおこすのは人間であり、人間がつくりだした社会なのだということは強調するようにしているのだけれど。

そういう授業をしているので、教える側としてもいろいろな環境問題が気になる。と同時に、環境問題を解決しようという試みも気になる。学生も、そういう試みについて感心をもっているように感じる。「環境問題は解決しなければならない」という気持ちの強さと、「でもどうすればいいのかわからない」というとまどいとがあるからだろう。

そんななか、先日書店で、三橋規宏『環境再生と日本経済 市民・企業・自治体の挑戦』(岩波新書 2004年)という本をみつけた(ほんとうなら本をここにのせたいのだけれど、実家のPCが古くてうまくのせられない!)。元日本経済新聞の記者で、現在は千葉商科大学の教授である三橋氏が、日本各地でおこなわれている「環境保全にむけた取り組み」を取材した結果を簡潔にまとめたこの本は、いろいろと参考になる事例がとりあげられており、興味深い。企業の事例もあるところがさらにいい。いいところだけを見ているような感じがしないでもないが、この手の本は、読者に環境問題の解決に期待を抱かせることも重要な役割の1つであり、とりたてて批判することでもないだろう。

この本を読んでみて改めて思ったのは、関わっているすべての人にメリットがあり、そしてすべての人が同等のコストを払う、これが地域や企業で環境問題を解決していくための秘訣なのだということ。近江商人の言葉に「三方よし」という言葉がある。「売り手よし、買い手よし、世間よし」という意味のこの言葉は、一人勝ちや一人負けの状況では、世間=社会にとって「よし」となる状況は形成されないことを示している。みんながもうかって、みんなで負担しあう、それが環境問題を解決するための前提なのである。

おそらくこれは、環境問題に限ったことではないだろう。大都市と地方との格差や先進国と途上国の格差が、環境問題を含めたさまざまな問題を引き起こしている原因であることに疑いはない。まずは「負け組」をなくすことだろう。「負け組」な地域が、そこからの脱却をはかり、それを「勝ち組」や、勝ち負けからは超越した位置にある(べき)政府がサポートする。こういうビジョンが共有されれば、少しは問題解決への芽がでてくるんじゃないだろうか。