ドキュメント 隠された公害

※今日から、紹介した本を直接amazonで購入できる設定にしました。気に入った本があったらぜひ購入してくださいね。といってもしょっぱなっから<在庫切れ>ですが・・・ 
「くまよむ」のくせに、このところ読んだ本についてのせていなかったので、今日は少し前に読み返した本を。

鎌田慧のドキュメンタリーシリーズ。東邦亜鉛による安中と対馬でのカドミウム公害(イタイイタイ病)についてのドキュメント。

この本では、取材にいって、地域の人たちから話を聞いても、まったく地域のことがわかった気にならず、焦る鎌田の姿が赤裸々に描かれている。それは、特に対馬の事例で顕著だったのだけれど、「鉱業所は島第一の会社だから大切にしなければ・・・・・・」(p.238)という町長(元東邦亜鉛対州鉱業所総務課長)の言葉に代表されるような、地域ぐるみでの「公害隠し」が徹底していたから。

イタイイタイ病が発生していることがわかったら、鉱業所が閉鎖に追い込まれてしまう。それは島の経済に大打撃をあたえる。ゆえに、公害は、なかったことにしなければならない。だから、“隠された公害”をほじくりかえそうとしている鎌田のような人間には、その真実は語られないのである。

鎌田は述懐する。

わたしは部落のひとたちを“被害者”と勝手に解釈し、かれらのひそかな協力をえて、“加害者”をやっつけるという、単純な“正義の味方”気取りでいたが、かれらには重い生活がある。それがようやくわかるようになった。(p.105)

公害は確かに生活環境に大きな被害をもたらす。しかし、公害の発生源である東邦亜鉛が撤退してしまったとしたら、公害はなくなるけれど、経済的には立ちゆかなくなる。これもやはり、生活環境に対する被害なのである。どちらにころんでも、生活は厳しいというのが、対馬の現実だったのである。これをもって鎌田は「重い生活」といったのだ。

「重い生活」・・・そう、生活は重いのである。その「重さ」に対して、常に敏感でありたい。あらためてそう考えさせてくれる本だった。