アイデン&ティティ

アイデン & ティティ [DVD]

アイデン & ティティ [DVD]

せっかくの連休なので、すこしは連休らしいことをしようと、まとめてDVDを借りてきて鑑賞。これはそのうちの1枚。友達に勧められていたのでかりてみた。

僕は「イカ天」全盛のころ、ちっともバンドブームにはのっていなかった。うらやましい気持ちはあったけど、それは音楽にたいしてというより、仲間どうしの友情とかそういうものにたいしてだった。音楽にたいしては、なんの共感もなかったといえる。それは、ユニコーンブルーハーツにたいしてもそうで、ユニコーンブルーハーツのよさがわかるようになったのは、大学をでたあとのことだった。いま考えるに、あのストレートなエネルギーをストレートに受け入れることが、気恥ずかしかったのだと思う。

なので、おそらくこの映画について僕が抱く感想は、当時バンドブームにどっぷりはまっていた人が抱く感想とは、ずいぶんことなるのではないかと思う。ことなるのだろうけれど、でも共通しているところもあるんじゃないだろうかとも思うのだ。それはたぶん、生きていくうえで一度はぶつかるもどかしさやいきづまりやジレンマの感覚。主人公の中島は、こうした感覚に苛まれながら、逃げたり、隠れたり、よけたりしながら、それでもなんとかたちむかっていくのである。最大の理解者である「彼女」や、神様ボブ・ディランの言葉にはげまされながら。

中島はたぶん、才能はあるのだけれど天才ではない。そして彼は、彼女やディランによるはげましを、ちゃんとうけとめるだけの勇気をもっていた。そんな彼だからこそ、バンドブームにのれなかった僕は、この映画に共感できたんだと思う。

それにしてもこの映画、脚本がクドカンなんだけど、ちっともクドカンっぽくなかった。そしてこの映画に関していえば、それがよかったのだと思う。これもまた、クドカンっぽいということなのかもしれない。