となり町戦争

となり町戦争

となり町戦争

まえまえから気になっていた本。友達から借りたので即読む。

考えさせられる内容の本でした。戦争は、戦争をおこなっている自治体どうしの協同によって遂行される行政上の施策であるという設定や、戦死者の存在は町内の広報誌にある人口動静の“戦死者〇名”という数字によってのみ知らされるのみで、銃声などまったく聞こえないという日常の描写からは、現代の戦争から奪われたリアリティを埋め戻そうとする作者の強い意志を感じます。

リアリティのない戦争から覚えた“違和感”を、日常の延長線上にありそうで、かといって現実にはありえそうにもない架空の世界における「戦争」を描く中から、具体的な形として浮かび上がらせる。そのような回路を通さなければ、戦争のリアリティは感じ取れないのかもしれない。

もっとも、ここまでメディアが発達する以前は、遠くの国で行われている戦争など、知る由もなかったわけで、ということはメディアが遠くの国の戦争について伝えるからこそ、リアリティの欠落した戦争がうまれるのだろう。戦争についての情報があればあるほど、戦争が遠い存在になっていく・・・