普天間基地移設についての覚え書き

普天間基地移設問題が、ここにきて大詰めを迎えようとしている。
いろんな情報が飛び交っていて何が正しい情報なのか(そもそも正しい情報なんてものはなさそうだが)よくわからないが、鳩山首相が3月末という期限を明言したことからも、事態は1つのヤマを迎えそうだということは間違いなさそうだ。


しかし、沖縄にとってあまり芳しい状況ではない。
3月4日に政府は、V字型滑走路をシュワブ陸上部と沿岸部を埋め立ててつくるという現行案を断念したとアメリカに伝えているが、そこで候補にあがっているのは、V字型案よりもっとひどいシュワブ陸上案と、ホワイトビーチから沖合の津堅島までの間を埋め立てるという案。
ようするに県内たらいまわしである。

しかも、現行の普天間基地は代替施設完成後も閉鎖せずに、防衛省自衛隊の管理下に置くことで滑走路を使用可能にし、有事の際には米軍に提供できるようにしておく方策が検討されているなどというとんでもない報道まで出てきた。


まったく沖縄をバカにした話だ。
どうしても米軍基地は沖縄に置いておきたいということなのだろう。


ホワイトビーチの案は、たしか辺野古が移設先候補として名前があがるずっと前に検討されていた案だったはず。
これがいまさら出てきたのは、つまるところ米軍としては軍港と海兵隊の飛行場とが一体化した基地を沖縄にほしいということなのだろう。
V字型案においても軍港の併設は明言されており、その意味ではシュワブ陸上案よりもホワイトビーチ案のほうが米軍にとっては都合がいいということになる。


そもそも、アメリカが現行案しか認めないと言い続けているのは、まだ日米間の正式な交渉にはいっていない以上、当然のことである。
それなのに、日本のマスメディアはいろんな案が出るたびにアメリカの要人から「現行案以外みとめない」という言質をとってきてはせっせと報道している。
アメリカが認めないといっている以上、普天間代替施設は沖縄につくるよりほかないんだ」という世論をつくりだし、沖縄に基地を押し込めたいだけなのではないかと考えざるを得ない。


今日、3月8日、稲嶺進名護市長は3月定例市議会での施政方針において「辺野古の海はもとより陸上にも新たな基地はつくらせない」とあらためて明言した。
これまでは事実上移設容認の立場にたっていた辺野古の区長も、隣接する豊原、久志の区長とともに「陸上案反対」を申し入れている。
ここまで明確に地元が反対しているなかで、そして普天間代替施設は沖縄にはつくらないことを公約にかかげた政党が政権を握っているこの国で、沖縄に普天間代替施設がつくられるとすれば、これはとても民主主義の国だとはいえまい。


「何がどう変わるのかはわからないけど、何かを変えなくてはいけない」という思いが昨年の政権交代を生み出したのだとすれば、この「何も変わっていない状況」は多くの日本人にとって大きな失望として経験されるだろう。
普天間をめぐる状況は、政権交代によって日本が変わったのか変わらなかったのか、そのことを示す重要な試金石なのではないだろうか。