s/he

きのう、去年まで所属していたゼミで博論の中間報告をしてきました。結果は上々。指導教官にも納得してもらえたし、有益なご意見もいただけました。


いろんな意味で重要な章についての報告だったので、この2週間ほどは先行研究の渉猟、再読、整理などに追われていたのですが、そうしたなかで読んだ英語の論文のなかで、“s/he”という三人称の表現がありました。


日本語にすれば、“彼/彼女”あるいは“彼/女”というところでしょうか。ようするに、男女を問わず三人称を表現したいときにつかう代名詞としてつかわれていたわけです。


これ、なかなかうまい表現法だなと思います。“he and she”と書くのは冗長だし、なんで男が先なのよ、ってことにもなりかねないし、かといって“she and he”だと意識しすぎな感じがするし。


この点、“s/he”であれば、短くてすむし、もともとの綴りであるところの“she”をいかした表現なので、女性が前面にでていて男性がうしろにさがっているのも不自然じゃない。


これと同じようなことで、日本語で書くときにいつも悩むのは、“they”の訳語。僕は一貫して「かれら」と、ひらがなで表現しています。「彼ら」とすることで、女性を排除した感じになるのを避けるためです。「彼ら・彼女ら」とすることもできますが、それではやはり冗長すぎるので。


語源的にはどうなのか知りませんが、「かれ」という用語が男性を意味していて、「かれら」という用語が男性も女性も含む意味になっているのは、どうも女性は「ら」という複数形の部分でしか捉えられていないからなのじゃないかという気がします。


だいたい「彼女」を「かれじょ」ではなく「かのじょ」と発音しているあたり、「かれのじょ=彼の女」が音便化したという想像がつき、ということは女性は男性の所有格でしか表現されえない存在として規定されていたのではないかと。


もちろんいま、「彼ら・かれら」という呼称が使われるときに、意図的に女性を排除しようという意識が働いているとは思いませんが、意図的でないからこそ、そこには権力性が隠蔽されている可能性があるわけで、男性である自分としては、いろいろ配慮しないとなぁと思うのです。


配慮する、っていう時点ですでに権力性が・・・なんていわれると困ってしまうのですがorz