赤・黒〜池袋ウエストゲートパーク外伝〜
僕が小説をよみたくなるときは、だいたい2パターンある。1つはよみたい小説をみつけたとき。もう1つは、忙しい時期をこえて一息つけそうなとき。
後者のときには、本屋さんにいって文庫本コーナーにいき、そのときに惹かれた本を手にする。そういうときはだいたい、単純に楽しめる本に惹かれることが多い。
で、先日、購入したのがこの本。
赤(ルージュ)・黒(ノワール)―池袋ウエストゲートパーク外伝
- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2001/02
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (34件) を見る
ドラマ化もされた人気小説『池袋ウエストゲートパーク』(以下IWGP)の外伝、ということで、本編をすべて読んでいる僕としても、ずっと気になっていた小説。ちょうど文庫化されていたので迷わず購入。
IWGPの面白さは、そのテンポのよさもさることながら、物語に通底する正義感にある、と僕は思う。正義感といっても、何も押し付けがましい、いわば大文字の「正義」ではなく、その場その場でそうすることが正義にかなっている、という程度の正義感。それは、友達を守ることであったり、「悪いものは悪い」と断定することであったり、死に瀕している悪人を助けないことであったりする。
この正義感の担い手は、本編ではマコトという主人公なのだが、本書は「外伝」とあるように、マコトではなく、本編で重要なサブキャラとして登場する下っ端ヤクザ(だけれども周りから一目おかれている)サルと、サルがサポートする30代前半の映像作家、小峰が、その担い手となっている。
内容についてはここでは触れないが、やはり石田衣良の提供してくれる正義感は、本書でも心地よく感じられた。「そうあってほしい」という方向に、物語が進んでいってくれることの心地よさ。そういう物語からは、さっぱりした読後感が得られる。(その点では、『4teen』も見逃せない。)
- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/05/22
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 87回
- この商品を含むブログ (143件) を見る
でも一方で物足りない点も。話のもっていき方が強引なところもあったし、無駄なエピソードも(外伝だからしかたないとはいえ)あった。そして、その正義感が鼻につくところも、正直なところあった。これは僕自身の心境の変化の結果なのかもしれないけれど。
いずれにせよ、IWGPはなかなかにおもしろいシリーズ。この物語が、多くの若者の心をつかんでいるのもわかる気がする。一冊くらい手にとってみても、無駄ではないですよ。