赤・黒〜池袋ウエストゲートパーク外伝〜

僕が小説をよみたくなるときは、だいたい2パターンある。1つはよみたい小説をみつけたとき。もう1つは、忙しい時期をこえて一息つけそうなとき。

後者のときには、本屋さんにいって文庫本コーナーにいき、そのときに惹かれた本を手にする。そういうときはだいたい、単純に楽しめる本に惹かれることが多い。

で、先日、購入したのがこの本。

ドラマ化もされた人気小説『池袋ウエストゲートパーク』(以下IWGP)の外伝、ということで、本編をすべて読んでいる僕としても、ずっと気になっていた小説。ちょうど文庫化されていたので迷わず購入。

IWGPの面白さは、そのテンポのよさもさることながら、物語に通底する正義感にある、と僕は思う。正義感といっても、何も押し付けがましい、いわば大文字の「正義」ではなく、その場その場でそうすることが正義にかなっている、という程度の正義感。それは、友達を守ることであったり、「悪いものは悪い」と断定することであったり、死に瀕している悪人を助けないことであったりする。

この正義感の担い手は、本編ではマコトという主人公なのだが、本書は「外伝」とあるように、マコトではなく、本編で重要なサブキャラとして登場する下っ端ヤクザ(だけれども周りから一目おかれている)サルと、サルがサポートする30代前半の映像作家、小峰が、その担い手となっている。

内容についてはここでは触れないが、やはり石田衣良の提供してくれる正義感は、本書でも心地よく感じられた。「そうあってほしい」という方向に、物語が進んでいってくれることの心地よさ。そういう物語からは、さっぱりした読後感が得られる。(その点では、『4teen』も見逃せない。)

4TEEN

4TEEN

でも一方で物足りない点も。話のもっていき方が強引なところもあったし、無駄なエピソードも(外伝だからしかたないとはいえ)あった。そして、その正義感が鼻につくところも、正直なところあった。これは僕自身の心境の変化の結果なのかもしれないけれど。

いずれにせよ、IWGPはなかなかにおもしろいシリーズ。この物語が、多くの若者の心をつかんでいるのもわかる気がする。一冊くらい手にとってみても、無駄ではないですよ。